ますますぽれぽれな日々

Formerly known as 「ぽれぽれな日々」@はてなダイアリー

HaynesのBody

kaepole2005-11-08

私が使っている楽器は、「ヘインズ」というメーカーの、製番14123、1935年製、銀のフルートです。
古いだけあって、機能的にはいろいろと不具合があるのですが、音そのものは丸くやわらかく、ちょっと枯れた感じも出てきていて、なかなかに気に入っています。買ったとき、ダンナには「ゆうても中古やろ。中古がなんでそないに高いねん」などと身も蓋もないことを言われてしまいましたが、「オールドってゆうねん!」と反撃して、せっせと吹き込んできました。
私の手元にきてから5年が経過しましたので、そろそろと思い、今年の7月末に、オーバーホールに出しました。消耗部品の交換と全体調整です。下手なところに出して楽器をダメにされては困るので、静岡のフルートマスターズに送ることにしました。8万プラス送料という、ビンボー菓子屋にとっては多大な出費となりましたが、結果から言えば、良い仕事をしていただいたようです。
しかしながら、そう思えるようになったのは、9月末に、別の所でもう一度調整をし直してもらってからの話なのです。
実は、フルートマスターズさんには、都合3度も送り返してやり直してもらったにもかかわらず、結局あまり気に入らないまま、受け取ってしまっていました。というのも、問題は「輸送」に関してありまして、向こうできちんとしていただいていても、搬送中に手荒な扱いをされただろうがために、戻ってきたら、部品が一部欠けとんだり(吹き始めて1時間程でペンッという寒気のする音がしました)、その次はネジがゆるんでいて全く出ない音があったり、と、何度送っても埒があかなかったのです。
この件、私かなり怒っているので、はっきり名指しで非難しますけれど、佐川急便、ひどいですね。ひどいという噂はむかしからあって、佐川で送り返されてきた時点で嫌な予感はしてたのですが、貴重品・美術品扱いのはずのものをいつものおじさんが片手でひょいひょい持ってきて「軽いですからね」とか言って渡されましたから、かなり絶句ものです。ダンナの会社などは、別の運送会社で扱う予定の荷物まで佐川が勝手に持ち帰って自分のところの伝票を上から貼ってた、っていうんで出入り禁止になったとか。マスターズさんも、佐川に楽器を扱わせるの、やめたほうがいいですよ。送る度に壊れていくようで、おそろしいです。
そんなこんなで、なんだか出にくい音があるにもかかわらず送るのをやめましたので、先生に相談して、手で持って行ける所を教えていただきました。うちから電車で1時間かかりますが、個人で修理をされている「フルートクリニック・ユウ」こと「濃野雄二」さんの工房です。
この方とは、見てもらえるまでに一騒動ありました。まず、送ったメールの返事がなかなか返ってこない。お忙しいのだろうと思って気長に待つこと一ヶ月、電話してもタイミングが悪いのかつながらないので、再度メールを送って、どうやら話途中のまま忘れられていたらしきことが判明。それからようやくお伺いする日時が決まったので、当日の朝行ってみたらば、なぜかお留守・・・30分おきくらいに電話しながら3時間、近場でうろうろ待ちました。お昼も食べ、もうあきらめて帰ろうかと思ってかけた最後の電話がやっとつながって、お昼過ぎからみてもらえた次第です。濃野さんの方が、パソコンから日程をカレンダーに書き移す際、一日ずれてまちがってたらしいです。やれやれ。
そんな方ですが、仕事の方はさすが職人さん、きっちり丁寧にしていただきました。まぁ、ぶっちゃけ、道具箱の蓋を開けたり閉めたり、ものを探したりという、無駄な時間が多いのは否めませんが、職人の世界の裏話なんかは、私はなかなかおもしろく聞かせていただきましたよ。ただ、話してる間、手が止まるから、これまた時間がかかる原因だったりするんですが。
それでも、試奏をしては私がああだこうだと音の鳴りに注文をつけるのに対して、嫌な顔一つせず、それどころか「ほうほう」といった感じで、きちんと何度も調整し直して下さったのは、とてもありがたいことでした。
マスターズの件を話すと、楽器をバラしてみて「これはNさんの仕事だな」と言われ、「もしまたマスターズに出すことがあったら、ノウノがさわったって言って下さいよ」と言いながら、「マニュアルに沿ったいい仕事がしてある。それでも、使う人の癖によって後々どうしてもズレが出てくるんだな。そのズレも計算して最初の調整がしてあるんだけど、オールドのものは特に、計算通りにはいかなかったりするんだな」とおっしゃってました。
濃野さんは、実はこういう古い楽器がお好きなのだそうで、「この時代のヘインズはいいのだよ〜」なんて言いながら、うれしそうに撫でまわしてはりました。「でも音程が悪くて扱いづらいですよ」と言うと、「不出来なところもかわいいじゃないですか。うまく使いこなしてやって下さいよ」だって。はいはい。
いろいろありましたが、とりあえず、みていただいて良かったと思っています。まだ当分は、この楽器とつきあっていくつもりですから。