ますますぽれぽれな日々

Formerly known as 「ぽれぽれな日々」@はてなダイアリー

ロマンス

kaepole2006-11-16

日にちが経ってしまいましたが、こないだの日曜日は年に一度のフルートソロ発表会でしたので、そのご報告を。
ぶっちゃけ、えぇ出来でしたわ〜! て、自分で言うなですが。すご〜く気持ちよく吹けたんです。
今年は、サン・サーンスの「ロマンス」。数年前に初めて楽譜を見た時から、いつかやりたいと思っていた曲でした。でも、難しいんです、バラードで。譜面上は、♯や♭がたくさんついてて転調もするしややこしいけど、それは指が慣れたら済むことで、大層な技巧は特に要らない、一見易しそうな曲なんですけど・・・そういうのほど、表情つけて情感たっぷりにうたわせたいから、大変なんです。
ここ数ヶ月、どうにも毎回同じに出来なくて、結局最後まで、吹き方が定まらない始末。一週間前と二日前に30分ずつピアノ合わせもさせてもらって、イメージはちゃんとあるのですが、思うように音をコントロールできないのは、私の技術不足。部分を抜き出して数度繰り返せば出来ても、通してその箇所がきた時にそれができなければ、曲として仕上がらないんです、当然のことながら。
当日の朝、出掛ける直前に15分ほど時間ができたので、ちょっとヘインズ婆ちゃんのご機嫌伺いをば。あ、「ヘインズ婆ちゃん」ってのは、私の使ってる楽器のことね。ヘインズっていうメーカーの1935年製の楽器なので、もう70歳のおばあちゃんなんです。組み立てて息を通してロングトーン。 お! いつになく麗しゅう。このまま今日一日お願いしますよ...。
会場のホールでも30分音出しの時間があったので、音階を少しやってから、楽譜を出さないで曲を通して吹いてみました。夏の終り頃からこの曲をずっとやってきてるわけですが、そのわりに「練習したぞー!」ていう気が全然してなくて、大丈夫かそんなんで...。だけど吹いてみれば、暗譜も勝手にできてる。考えてみたら、時間がないながらも仕事の合間に、少なくとも一日一回は通すようにしてきたのが、淡々と積み重なってきてたんでしょか。
そんなんだから、前日までほとんど緊張感というものがなくて、あまり無さすぎるのも、ちとやばいぞと。ちゃんと緊張しておかないと、いざ舞台に立ったとたんに、急に膝とか唇とかがわなわななったりしがちだから。
出番は、2部の16番目。開始から約3時間半待ち。1部の間はホールの客席でみなさんの演奏を聴いてたんだけど、会場がちょっと寒くて、途中でトイレに立つほど冷えてきたので、休憩の間に早々と舞台裏の控え室に入らせてもらって、小さいおにぎり一個食べて、2部はモニターで聴いてました。
そうしてるうちに、胃がきゅうぅとなって、なんか吐きそう。やっと緊張してきた。でもいつもとパターンが違う・・・吐き気がするような緊張の仕方はこれまでほとんどない。そしてまたトイレ。これは冷えのせいではなくて緊張のせいだったの? だとしたらそれもめずらしいなぁ。だいたいは心臓がバクバクするタイプなのに。ふぅむ、吐き気とトイレか、「緊張」の横道みたいだ。
とか思いながら、ヒールを脱いで、その辺をうろうろぺたぺた。落ちつくための私の儀式みたいなもの。願掛ブレスレットも今年は忘れず着けてる。衣装は、黒の薄手のワンピースに、生成りのレースの7分袖カーディガン。
チューニング室でA音を出してみる。うーん、音程が定まらない・・・ しょうがないから、ひたすら楽器をあっためる。
今日はとにかく、音さえきちんと出てくれれば... かすれたり詰まったりしないで、豊かな音で鳴ってくれさえすれば... それだけを念じながら、舞台袖へ。ぎりぎりまで楽器に はぁぁぁーっと息を送って、最後は自分のために はぁぁぁーっと息を吐いて、アナウンスとともに舞台中央へ。
昨年は、吹いてる途中で記憶が飛んだんですよ。だから今年は、しっかり眼を見開いてやらなくちゃ。なんてことを考えつつ、最初の2小節はテンポと音程を探ってる間に過ぎて、低音域でのテーマ。あれ、低音ちゃんと鳴ってる?・・自分の耳に届いてこない・・・だけど無理に押し出して鳴らそうとしてはダメ。あくまで 深く、よどみなく。
転調してテーマが展開してカデンツァっぽく盛り上がっていきます。あー、自分の音が聞こえてきた。ピアノの音も聞こえてきた。「こんなふうに吹きたい」という気持ちを持つ余裕が少しずつ出てきて、曲想に集中し始めて、音が楽に鳴り出します。やっぱり今日は楽器の調子が良さそう。よかった。大丈夫。ちょっと勢い余って2音ほどひっくり返っちゃったけど。そしてトリルの息継ぎに下手してブチッとなっちゃったけど。大丈夫、態勢に影響無し。
また転調して dolce espressivo て書いてありますから、やわらかくたっぷりうたいましょう〜。 うわぁ ホールと楽器と体が共鳴し始めた! 気持ちいいー! 響いてるのがわかった! 楽譜から目を離してるわけじゃないのですが、ホールの一番遠くの天井と壁の隅が見えたような気がしました。ノってきたよ〜 うん、いい感じいい感じ。
低音で落ちついてから、転調してテーマがオクターブ上でかえってきます。フォルテでしっかり吹き上げなくては。もたついてはいけない、音楽を前へ前へ、という気持ちだったせいで、一音一音は丁寧に置いたつもりではありましたが、若干テンポが速かったかな。でも、焦った感じはしなかったように思います。
もう一度転調して、終曲。最後の10小節くらいは、D♭とA♭だけのつながり。めちゃめちゃ音程取りにくいー・・・ 息の圧力を落とさずにピアニッシモ。下腹にチカラ入れて、「下がるな〜〜〜っ」と念じながら伸ばして、お・わ・り。
ひゃぁ〜 たのしかったぁ! そんな感想を持った発表会はこれまでなかったです。
しかし、疲れた。 疲れた。 疲れた。  終わってから何度言ったか。
控え室でチョコレート菓子をボリボリ貪ってしまいました。
そして打ち上げでしっかり飲みました。食べました。
師匠に「音 やわらかいねぇ!」と言っていただけました。も一人の先生に「低音が下までよく鳴ってた」と言っていただけました。
もっともっと繊細に表現したいし、指回りも怪しいし、音程も危ういし、体力もつけないといけないし、と、課題は尽きないけど、本番が一番仕上がりが良かったなんて、ちょっとないことなので、今回はもう、満足です。
あーー 疲れたっ!!