ますますぽれぽれな日々

Formerly known as 「ぽれぽれな日々」@はてなダイアリー

Keith Jarrett

5月8日はキース・ジャレット氏のお誕生日だ。御歳69になられる。

先日(5/3)のフェスティバルホールでの模様、
あとでネットを見て「そうだったんだ」とわかったこともあったのですが、
2階席左後ろの方で観てたその時はといいますと。


まず、キースのピアノを生で聴くの、初めて。すごく楽しみにしてました。CDでは唸ったり奇声上げたりしてるでしょ、
あれをじかに観られるのかな、なんてぷぷぷと思ったりね。
会場の入り口には、「本日ライブレコーディングのため途中の出入りお断り」という旨の貼紙がしてありまして、
一緒にチケットを取ってあげた某イタリアンバールのゆるいマスターMさんは先ほど「遅れます」のメールをよこしていらっしゃってましたが、
ということは彼は第一部をまるまる逃すということになりますな。あーあ。(前もってチケット渡しておいてよかったよ。)
入って席を探しますと、我々の番号とおぼしき場所になぜかすでに座ってる人が。係の人に確かめてもらったら
その方々のまちがいだったようで。よかった、ダブルブッキングかと思ってびっくりしたよ。
手元に双眼鏡(ちょっと遠いからね)とのど飴(体調は良好だけど念のため。静かな場ではいつもです)をスタンバイ。わくわく。
ほぼ定刻に始まりました。


なんかもう、その演奏スタイルと、紡ぎだされる音に、目も耳も釘づけ。
鼻歌も、音量的にピアノにかき消されるのかなと思ったりしてましたが、意外にちゃんと聞こえましたよ、
時々腰を浮かせて、ピアノの弦と話をしてるみたいなの。
ノってきた時に立ちのぼる気迫には、こちらも息を呑んで引き込まれ。
そしてあたたかい音はどこまでもあたたかい。特に第一部の最後の曲は沁みました。
一曲弾きおわるごとのお辞儀、手をだらんと下げて、屈伸運動してるみたいで可笑しいんだけど、
でもあれはきっと、全身全霊傾けての入魂演奏ゆえ、力尽きちゃってるんだろうなぁ。


とまぁ、わたくしかなりのめりこんで聴いておりましたので、
実は周りの咳とか初め全然耳に入ってなかったんですけど、
現状は、けっこうコンコン咳してる人、多かったみたいなんですね。
だから最初にキースが演奏を中断したとき、何が起こったのか全然わからなくて。
「譜面が・・」どうのこうのと言っているようなのだけれど聞き取れない。
舞台袖でなにやらごちゃごちゃやって、演奏再開、というのが二度ほどあったかな。
「譜面のない即興演奏なんで、みんな協力してね」みたいなことを言っていたのだとわかるのは、後日のこと。
申し訳ないけど、この時点で私は、キースが気分を害していたこと気付けてなかった。


第一部と第二部の間の休憩で、遅刻のMさんと合流(笑)。ロビーのモニターで見てたんだって。
画面で見てた方が客観的にわかりやすかったのかな、「キースとお客さんとの間にかなり温度差ありましたね」って、
あとでキースが大中座した時に、Mさん言ってた。
第二部、始まって、登場するなりまたつかつかと舞台脇へ。場内アナウンスが
「録音録画禁止」を告げる。うっわ、最初から言われてたやろ、そらあかんわ。
そんな輩を見かけたキース本人が、スタッフに言いに行ったんですな。
気を取り直されて、再開。でもやはり、場内の咳に気が散る様子。この頃には私もたしかに、咳がやたら多いなと思い始めてて。
一度は茶化したメロディでたしなめ。
一度は邪魔される前にと速攻で鍵盤に飛びつき弾きはじめ。
一度は一瞬の静寂に満足げに滑り出し。
だけど、曲中いいところでおもむろにどこかでコンとやられて、
丁寧にたぐっていた糸がぷつんと切れてしまったんでしょうね、
手を止め、立って、
ああこれは完全に怒ってるなという口調で何か言って、袖に引っ込んでしまいました。
前の方では再登場を要求する拍手やら掛け声やらが上がっているのですけど、
そんな中、「会場のみなさまにお知らせいたします」とアナウンスが入り。
さっきキースがなんて言ったのか訳して伝えてくれるのかなと思ったら、
「しばらくお待ちください。」て、
それだけ?!
たぶんね、キースの声が届かなかった後ろの方の席の人や、英語のわからない人には、
中座の理由が全然わからなかったと思う。
私にも言葉はわからなかったけど、とにかく繊細な神経の持ち主なのだなというニュアンスだけは伝わったので、
やっぱ咳かなぁと、なんとなく。
そんなだから、10分程中断ののちようよう再開された演奏も、
最後、まぁ見事に響いた我々の斜め後ろの男性のコホンという一声で、あっけなく幕切れとなってしまったわけで。
キースは汗拭き用に置いていた白いタオルを「はっ、やってらんねぇぜ」という感じで放り投げ、
「以上おわり。」というようなことを言って舞台から去っていきました。
照明が点き、アナウンスも公演終了を告げ。
痛恨の咳をした男性はMさん曰く「真っ赤な顔をして速攻出て行かれましたねぇ」だって。私ゃ振り向いて見る勇気なかったよ、、。


自分が悪いわけじゃないけど、なんともいたたまれない気分。
主催者が事前にちゃんとキースの要望を伝えておいてくれさえすれば、
もっと機嫌良く弾いてもらえて、もっとみんな満足できただろうに。
ジャズのつもりで聴きに来てた人は、クラシック並みの静けさを求められているなんて思いもしなかっただろうし。
出る途中、そのへんに立ってる案内係の人つかまえて「なんで終わったん?」と訊いてるおっちゃん見ましたわ。


途中長く中断した時点で、はっきり言って私の集中力も切れちゃってました。
ものすごく、不完全燃焼。
こういうこと過去にも何度かあったようですね。だから、
キースらしいステージだった、とも、いえるのかも、しれないですけれど。
でも、んー、やっぱ、もうちょっと聴きたかったなぁ、浸りたかったなぁぁ。
もやもや・・・・


・あとで読んだ記事のひとつ:http://news.livedoor.com/article/detail/8801343/
・ホールからお詫び文が出てましたね:http://www.festivalhall.jp/img/pdf/info20140506.pdf



先月のギドン・クレーメル氏は67歳。ジェフ・ベック氏が69歳。
どのおじいちゃんにも驚きが秘められてるのですな。